キオスク

『キオスク』ローベルト・ゼーターラー、酒寄進一訳(東宣出版)

「はじめて出逢う世界のおはなし」というシリーズらしい。

 

 

末が舞台(朗読劇)やってて、気になったけど結局観に行かなかったんだよね。でもその気になったのを引き摺ってて、やっぱり観に行くべきだったんだろなあとおもってる。(稀によくある現象)
本屋うろついてたらこの本を見つけて、そのときは我慢したけど結局翌日買ったw(そしてその夜のうちに読んだ)(夜中に仕事があったのでそれまで数時間自席で読んでた…)(ナチュラルにサボってるが、一気読みという最近にしてはなかなかいい時間を過ごせてしまった気がする)(…)

 

惹句として「ノスタルジックな空気感がたまらない青春小説」とあるんだけど、いやそうなんだけど、だけど、いやそう!?それだけで括っちゃって大丈夫!?みたいな感じある。

 

印象的だったのは、フランツが(フロイトに言われて記録するようになった)夢を書き留めたメモをショーウィンドウに貼るようになる辺り。というか、そのときの彼の考えもしくは思い。

「夢です。ただの夢」
 手巻きタバコの灰がゆっくりと床に落ちた。
「そういうことなら、俺個人にはたしかに無意味かも知れねえな」労働者はがっかりしていった。
「そういったはずです。まあ、無意味だということだけははっきりしたわけです。でもショーウィンドウに貼ったいかれた夢のメモがいつかだれかの心の琴線に触れ、その心を動かすかもしれません。わからないことですけど」

物語を世に出すことと、同じだとおもって。

それでもときにはメモを読んで考えこみ、そのささやかな考えを静かに持って帰る人の姿を目にすることがあった。

わかりやすい部分としては、フランツは都会に出てきてフロイトと出会って彼のアドバイスもあって恋をしキオスクから世界を知りその流れに巻き込まれる、そういう話だ。
その一方で、これはフランツが言葉の力を知る物語でもあるんだと思う。
トゥルスニエクから、母との絵葉書・手紙のやり取りから、キオスクを取り巻く状況(毎日の新聞、赤のエーゴンの死とその報道のされ方、トゥルスニエクの逮捕、論調を揃える新聞たち、夢のメモから何かを受け取る人々……)から、彼は言葉の力を知る。
だからフランツは、連行されるそのときもメモを貼る。

トゥルスニエクを連行した男が、フランツを迎えに来たときには罪状を言わないのが不気味だった。
そして7年後(連合軍の空襲が激しくなっている)には、トゥルスニエクを密告した隣の精肉店も過去形になっている。

重い。し、今このときにこういう物語を読んでしまったことをなんかこう考えなくもない。
でも、わたしはこの本を嫌いじゃなくて、たぶん好きだとおもう。読んでよかった。