イリノイ遠景近景

『イリノイ遠景近景』藤本和子(ちくま文庫)

 

しかし苦難の中にあっても、「ひとりでいることの自由」を、人間性の最後の砦のように守ろうとする人々がいるのだ。他人のたてる物音を聞き、他人の視野に囲まれて暮らすことの辛さに耐えることを拒む人々。

p.135 ギヴ・ミー・シェルター(2)

 

ラマ・ナヴァホの人たちは母系の大家族を構成して、それが居住の単位になっているので、一人暮らしの女性もその集合体のなかにいる。(中略)孤立して生活しているわけではまったくないが、彼女たちの家の中に男の姿がないことはたしかだった。
「そうねえ、夫たちはどこかへ消えたり、若い女性とねんごろになって出てってしまったケースがおおいのよ」とメイリーがいった。
「ここでは男たちがさすらう種族なのね」
「妻が夫にあいそをつかしたら、家の戸口の前に馬の鞍をおくの。それが別れの挨拶、これきりよ、という意味よ」
 男たちはあちこちに住処をもとめさすらい、女たちはどっかりと大地にすわりこんで布を織るのである。

p.345 メイリー・イン

「この世についに住処を見つけることのなかった三人の女」のひとりとしてナタリーア・ギンツブルクが出てきてちょっとびっくりしてしまった。須賀敦子以外で初めて見たかもしれない。やはり読んでみるべきなのだろうか。
シモーヌ・ヴェイユも出てきて、ちょこちょこ名前を見るので気になるのと、最近&Parisで部屋で撮られた写真を見たのでやっぱり気になる。
もうひとりはフリーダ・カーロ。

フリーダの日記の最後のページには、黒い死の天使が天へのぼっていく絵が描かれていて、「退場は心たのしいものとなりますように――そして二度とふたたび帰ってきたくはないものだ――フリーダ」という言葉が記されていたそうである。

p.355 メイリー・イン