『砂漠が街に入りこんだ日』グカ・ハン、原正人訳(リトルモア)
安定した居場所を持たない人びとの物語、かなと思った。
大抵の主人公が、今いるそこを居場所だとは感じていないように見える。自分の家にいる者も。
あとがきを読むとたしかにどこかからどこかへ移動している人の物語だ。でも、家からどこかへ移動する主人公も、家を安定した居場所とは見なしていないように思える。(たとえば、「家出」の主人公)
静かで、どこか透明だと、おもう。
あなたがどう思っているのかまるで想像ができませんでした。あなたが謎めいているということではなく、つまるところ、私にはあなたが空虚に見えたからです。あなたはいかなる願望も欲望も、さらには感情すらも抱いていないようでした。だからこそみんなあなたに夢中だったのでしょう。あなたはまるで鏡のように、あなたに向けられた憧れを彼女たちにはね返していたのです。
(「真夏日」)
しかし、こんなふうに自分が知らないことを理解し、手探りをすることで、韓国語で執筆していたらとうてい辿り着けなかったであろう場所に至ることができる。私にとって未知の馴染みのない場所まで。この本は、その彷徨の果実である。
(作者あとがき)
