『掃除婦のための手引き書』ルシア・ベルリン、岸本佐知子訳(講談社)
短編集で読みやすい。
決して明るい話ではない……むしろ悲惨な話な気がするけど、テンポがよくて言葉が面白くて、そこに書かれていることが切実で(描かれているのは自分ではないのに、まるで自分の心情かのように迫ってくる)、読まずにいられない。その上、読後感は悪くない。
もっと読みたい。
わたしが本当に盗むのは睡眠薬だけだ。いつか入り用になったときの保険に。
(掃除婦のための手引き書)
実際のできごとをごくわずか、それとわからないほどに変える必要はどうしても出てくる。事実をねじ曲げるのではなく、変容させるのです。するとその物語それ自体が真実になる。書き手にとってだけでなく、読者にとっても。すぐれた小説を読む喜びは、事実関係ではなく、書かれた真実に共鳴できたときだからです。
(「物語こそがすべて」リディア・デイヴィス)
訳者あとがきにあるように、ほかの短編もいつか読めたらいいな。


