八本脚の蝶

『八本脚の蝶』二階堂奥歯(河出文庫)

 

化粧品や人形や本や、彼女を彩る趣味(という言葉が適当かはわからないが)についての楽しい文章たちが、いつのまにか内面へと向かう文章たちになり、終盤には一気に死を望む文章になる。
わたしは、内面へと向かう文章たちが結構きつかったな。もちろんその後もだけど。今でまだよかったと思った。数年前だったらきっと、耐えられなかった。「耐えられなさ」がどんな形をとったかはわからない。

 

 

 

 

 

以下はちょっと思い出しただけの、特に関係のない自分の話。

死にたい、と積極的に思ったことはたぶんない。
ただ、死んでもいいとか死んだ方が楽だなとかこれで死んでもまぁそれはそれで、とか思っていた時期はたぶんある。あの頃、たとえば手が滑って場所を誤ったり力加減を誤ったりしていたら。
今はしていないけれど。したいともあまり思わないけれど。
それでも、あの頃なんでそのことに縋っていたのかは思い出せる。
その痛みは、ほかのすべてを遠ざける。その一瞬だけは、痛み以外のすべてを忘れられる。
その感覚を今でも思い出せる。
その誘惑は、あまりに甘美だ。