『須賀敦子全集 第1巻』須賀敦子(河出文庫)
「ミラノ 霧の風景」
「コルシア書店の仲間たち」
「旅のあいまに」
亡くなった友人の話が多いなあ、という印象だった。特に前半。追憶だからだろうか。
その悲しさやるせなさに、どうしても立ち止まってしまって、前半は1編ずつ読んでいくのがやっとだった。
祖父が亡くなった後でなかったら、わたしはこんなに須賀敦子の文章を、取り込まれるように好きになっただろうか、と、おもったりもした。
唯一の孫であり、おそらくはいい孫ではなかった、最後まで、――そのうしろめたさのようなものも含めた悲しさがわたしの中になかったなら、もしかしたらわたしは須賀敦子自身の文章になど目もくれずに『島とクジラと女をめぐる断片』からすぐに『インド夜想曲』にいったのかもしれない。どちらがいいとかいう話ではない。わたしはたまたま、祖父の死から数年後に須賀敦子訳の小説を(その時点では彼女のことなどまったく知らずに)手に取り、そして彼女の文章に嵌まってしまった。それだけのことだ。けれどきっと、鈍いわたしは身近な人の死を経験していなかったら、こんなに痛切にその文章を感じることはなかったとおもう。かなりかっこつけた言い方をするなら、文章との出会いとは、きっとそういうものなのだろう。

