マクベス

『マクベス シェイクスピア全集3』松岡和子 訳(ちくま文庫)
筑摩書房 シェイクスピア全集 3 マクベス / シェイクスピア 著, 松岡 和子 著

え、なんかすごい読みやすかった…。(どんなだと思ってたのか)
注釈がわりとあるのと、注釈やあとがきで翻訳にあたっての解釈に触れられていること、解説(主に魔女について)、というので読みやすかったし、親切だなと思った。
たとえば翻案するときに、版や訳者による幾通りかの解釈を知れたりするのは手っ取り早いのではないか、とか。
これはあくまでも私個人の好みだけど、注釈とか、あとがきが解釈をメインにしているのがいい。文学論(?)とかじゃないのが。解説もそっちじゃなくて、当時の魔女の規定についてだったし。私はこの訳本のスタンスが好きだなと。
えー、これ、今までに別の訳で読んだ作品もこのシリーズで読み直したくなるじゃん!(…)

メタルマクベスの原作ということで読んだのだけど、いろいろと興味深いのでメモ。(いずれ舞台の感想と一緒に纏めたい)

  • メタマクは登場人物を整理してある(王子を一人にしたり貴族をほぼマクダフ一人にしたり)
  • メタマクにあって原作にない場面がある
    • ランダムスターの新しい城での宴の夜、王とランダムスターの会話
    • グレコがフェルナンドへ行く前の、マクベスとグレコの会話
    • 裏切った貴族の処刑(原作ではマルカム経由で報告を聞く形だったものが、メタマクではマルカムが実行する(そもそも王が実行しようとしている))
    • 逃げるレスポールJr.にグレコが助言する場面(ここでグレコはレスポールJr.の教育係だと言っているけど、そういう話も原作にはない)
  • ジェイムズ1世の御前で上演されたという原作のある種特殊な事情による部分は(おそらく)削除している=舞台単体でわかりやすいようにしてある
    • エドワード懺悔王の治癒力のくだりとか、2回目にマクベスが魔女たちと会ったときの王たちの幻影の一人がイングランド王・スコットランド王を兼ねていることを示す表現とか。(幻影自体は、レスポールの幻という形でメタマクにも登場する)
    • 一番わかりやすいのは原作はマルカムが王位を継ぐのにメタマクのレスポールJr.は死ぬこと。
      • 原作のフリーアンス(バンクォーの息子)も逃げ延びてるけどその後登場しない。
      • 史実としてはマルカムが王位を継いでいる。バンクォーはジェイムズ1世(スコットランド王としてはジェイムズ6世)のスチュアート朝の祖先とされていて(バンクォウ – Wikipedia)、バンクォーの子孫が王になるという予言はこれに基づいているのだろうし、ジェイムズ1世の御前という意味でもここは入れたかったのかなーとか。
      • 解説によれば、シェイクスピアが歴史劇を執筆する際に座右の書としていた『年代記』(ラファエル・ホリンシェッド)では、ダンカン王殺しはマクベスとバンクォーの共謀となっている。ジェイムズ1世・スチュアート朝の祖先であるバンクォーを王殺しとすることは避けたのかな。
      • 原作はこれ、歴史劇なんだよね…。なのでかなり脚色がありつつも基本的なところは史実に沿っている。
      • 現代日本の観客が、史実や、マクベスとはこういう話だということを知らずに観ると、予言の後半はどうなった…?ってなる。気がする。
      • ただ、予言に沿うようにフリーアンスを王位に就けるのも無理がある。(少なくとも劇中、バンクォーが王家の血を引いているという話はないので)(ちなみにマクベスは原作で、ドナルベイン(マルカムの弟)が「血のつながりが近い」と言っている。ダンカン王を殺した後王になっていることからしても、王家の血を引き、かつ近い家なのだと思われる…wikiによれば、ダンカンとマクベスは従兄弟(ダンカン(ダンカン1世 (スコットランド王) – Wikipedia)は前王マルカム2世の長女の息子、マクベス(マクベス (スコットランド王) – Wikipedia)は次女の息子)。これがあまり言及されないのも、観客が背景を知っている前提だよな…)
      • メタマクのラスト、マーシャルが王にされる場面はの皮肉っぽさは、皮肉と同時に、マーシャルを王位に就ける説明でもあるんだわな…。