~かおりを飾る~ 珠玉の香合・香炉展

@静嘉堂文庫

 

思ったより上ったところにあった。丘の上というかなんというか。
洋館がすごかった。(not美術館)

 

ものの性質上、小さなものが多くて(たまに妙に(?)大きいものもある)、その細工ももちろんすごいし、それが綺麗に残っているのもすごいなあと。
十種香道具(香箱)って、手箱みたいな箱の中に、お香の道具が入っていて、どれも小さいけど、細い柄とかにもすごく細工がしてあって、それがちゃんと残っていて。すごい。(語彙力)
あとこれはだから何ってわけでもないメモなんですけど、岩崎家は表千家なんですね。

そして曜変天目ですよ…!
世界に3点(何故か?ぜんぶ日本。ぜんぶ国宝)しかない曜変天目の1つを近くでじっくり見られる機会なんてそうあるまい…。
すごかったです。
小振りなお茶碗(同じ大きさに作られたお椀がご自由に手に取ってみてくださいってあったんだけど、手に馴染むような、お茶をいただくのにちょうどよい感じだった)なんだけど、引き込まれるような。
たしかに宇宙とか、感じちゃうかもしれないと思ってしまう感じ。
美しくて、でもそれだけじゃないというか、陳腐な言い方だけどなんか、オーラがあるような。只者ではない気配というか。いやそりゃあ只者ではないんだがw
ちなみにこのお茶碗は稲葉天目とも言うんだけど、家光から稲葉家(春日局→孫、稲葉家は後の淀藩主)に伝わったから、らしい。(明治期に、稲葉家→小野家、で、最終的に岩崎彌之助)
そういえば、こういう抽象的な?というか、具象でないお茶碗はどこを正面とするんだろう、っていつも思うんだけどw、今回の展示の感じだと、この稲葉天目は外側で青が出ているところを正面としてる、のかな?
全然語彙力が追い付いてないけど、観に行ってよかった。

 

図録はないんだけど、簡単な図録というか、文庫版(たぶん)の本(350円(たしか))が手軽だけどカラーだしよかったです。

 

 

以下はTumblrおよびnoteに載せたやつ。(20170728)


 運転再開見込み未定、とのアナウンスに電車を降りた。
 あいつも仕事帰りの時間だろうと連絡してみたら、隣の駅で足止めを食っていた。この辺の一駅は近い。落ち合うことにした居酒屋で先に着いてビールを飲んでいたら、
「洋、」
「おお、……調子悪いの?」
 やってきた宗介はなんだか顔色がよくなかった。
「調子っていうか……夢見?」
「ゆめみ」
 なかなか聞かない単語だな。
「うなされるの?」
 心なしか青い顔で頷く。
「なに、こないだ振った女とか?」
「ちがう」
 そこはきっぱり否定すんのね。
「どしたの」
「こないだ、曜変天目見たじゃん」
「ああ、稲葉天目」
 静嘉堂文庫で、所蔵の国宝・曜変天目が公開されているというので観に行った。先週末のことだ。
「あれが夢に出てくるの」
「……綺麗そうだけど」
 国宝の茶碗が夢に出てきても悪夢にはならなそうだ。
「そうなんだけど」
 ビールにもほとんど口をつけず、宗介は暗い顔をしっ放しだ。
「ぬるりって」
 茶碗に似つかわしくない語感に枝豆を剥く手が止まった。
「手が出てくるの。ぬるりって黒い手がのびてきて、足首を掴むの」
「それは、ホラーだな」
 暗い顔で頷く。
「ああいう器ってなんか変な力があるのかな」
「うーーん、まぁ、すさまじい雰囲気ではあったけどな」
 向かいのビールは全然減らない。
「どうすればいいんだろう、手に……は入らないよね」
「国宝だからな」
 曜変天目自体、世界に三つしか現存していないと言われる茶碗だ。
 稲葉天目どころか、似た器もないんじゃないか?
「割ったら収まるかな」
「物騒なこと言うなよ、国宝だし、なにより捕まるぞ」
 普段だったら言わないような突拍子もないことばかり言って、宗介は暗い顔のまま項垂れた。
 うん、どうすっかな。……あれ、
「足首掴まれて、その後は?」
 へ? と宗介が俺を見る。やっと顔上げたな。
「足首掴まれるだけ?」
 こくり。子どもみたいに頷く。
「夜毎に近づいて来たりは?」
 ぶんぶん。大きく首を振る。
「じゃあ……特に害はないんじゃないか?」
 ぱちぱち。まばたきして俺の顔を見る。
「ものすごく綺麗だから魅入られちゃったけど、茶碗の側には特にそれ以上何かしようって気は、ないんじゃないか?」
 ふむ、と考える顔をして、
「まぁ、たしかに、足首掴まれる以上のことは、ない、かな……」
 うん、と頷いてみせる。
「めったに見れないものだし、すごく綺麗だったから、なんつーか、興奮したんだろ。そのうち落ち着いたら、平気になるんじゃないか?」
「……うん、そうだね」
 心なしか、顔色がよくなった。
 その後は普通にビール飲みながら餃子や唐揚げを食べて、いつものような近況やみんなの話をした。ひとしきり飲み食いした頃には運転再開していた。同じ電車に乗って、先に降りるあいつを見送る。
 稲葉天目は、たしかに美しかった。
 深く艶やかな黒と、そこに浮かび上がる青と星のような斑点。
 一人の部屋に帰ると、しんと静かで、なんだか変な感じ。いつもと同じなんだけど、あんな話をしたからか。
 稲葉天目は、たしかに美しかった。
 美しくて、小振りな茶碗なのにその大きさに似合わないようなただならぬ気配を放っていた。
 惹き込まれて、魅入られてしまいそうな器だった。あんな話も無碍にできないくらい。
 ぬるり。足首を掴む手に引き込まれたら、そこは星の瞬く夜闇だろうか、それとも発光器のちらつく深海だろうか。
 美しく、凄まじい器。
 今夜は俺の夢にも出てくるだろうか。